出生前診断

 

  出生前にこの疾患が疑われるのは、一般的には定期的な妊婦健診の超音波検査で長管骨の著しい短縮と胸郭の狭小化が認められた場合です。特に長管骨の短縮は、妊娠16~18週以前から始まっていますが、一般的には妊娠22週以降で明確化します。そして妊娠28週ごろからは超音波検査で四肢の長幹骨長が-10SD程度(16~18週相当程度)と極端な短縮を示し、胸郭低形成とこれにともなう羊水過多が特徴的です。妊娠30週前後からは全く長幹骨の伸長をみとめなくなります。しかし骨化自体は良好で易骨折性などは認めません。他には脊椎の扁平椎やⅠ型では大腿骨の弯曲(電話受話器様変形)もよく知られた所見ですが、超音波検査で描出することはそれほど容易ではありません(リンク参照)。Ⅱ型に特徴的とされる頭蓋骨の変形(クローバー葉頭蓋(Ⅰ型TDにも認められることがある))も超音波検査で認められることがあります。分娩予定日前後に至ると比較的巨大頭蓋により児頭骨盤不適合から経腟分娩が困難になりやすく、帝王切開が選択されることが多くなります。
  妊娠中期から極端な四肢の短縮が認められた場合は、TDは最も疑われる疾患で、診断のためには超音波検査による精査が最も有用かつ効率的であり、最近は三次元超音波検査も行われていて、頭部や顔面の特徴や軟部組織の描出に効果的ですが、確定診断までは必ずしも容易ではありません。
 近年は放射線診断の精度向上が著しく、骨系統疾患の出生前診断として胎児CTが実施されて、ほとんど確定診断に近い診断能力が示されてきました。ただし胎児CT は被曝の問題が皆無ではなく、もちろん推定線量は許容範囲とはされていますが、実施に当たってはその週数や実施することの意義などを慎重に検討したうえで行うべきでしょう。
 またFGFR3遺伝子を用いた診断では、遺伝子変異が示されれば診断は確定するので、大変有用な診断方法です。しかし、現在の日本ではFGFR3遺伝子変異の検査が実施できる施設はほとんどなく、また実施できたとしても診断意義のあるFGFR3変異がTDの全例に認められる訳ではないことや、変異が認められない場合でもTDの診断を否定することはできないといった限界もあります。